「ユーザー」と「情報」をつなぐ情報アーキテクチャ設計(前編)
今回のブログはこちらの文献を参考にしています。
「IA100 ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計」
前編では、Webサイトにおける情報アーキテクチャ設計の役割と設計前に必要な要素についてご紹介します。
設計の手順を紹介するものであり、手法の詳細を書いていない点はご了承ください。
情報アーキテクチャ設計とは?
情報アーキテクチャ設計は、ユーザーと情報を繋ぐための技術であり、わかりやすさを実現するためのデザインです。
情報アーキテクチャ設計を行うことで具体的に以下3点の効果を導きます。
- ユーザーが情報を探し、活用できるようにする
- 情報提供者が自分の意図通りに情報を提示できるようにする
- サイト内での情報の変化、増減によるクオリティの低下を防ぐ
優れた情報アーキテクチャは、ユーザーに対して効果的に情報を提供するだけでなく、その情報を自分なりに活用できます。また、情報の追加や更新があってもその設計は破綻しません。
情報アーキテクチャ設計を行う前に
情報アーキテクチャ設計を行うためには、その前提となる以下3つの要素の分析が必要になります。
- ユーザー(利用者)
- どういったユーザーがいるかを明らかにし、状況やニーズを正しく理解する
- コンテンツ(サイトで扱う情報)
- サイト内で扱われるコンテンツの性質やそのコンテンツ間の関係性を明らかにする
- コンテキスト(文脈)
- サイト設計の目的と制約条件を明らかにする
上記の前提条件の把握と優先順位付けを行うことで、設計時の判断材料になります。
これらの分析はプロジェクト全体としての意義を考えながら計画していきましょう。
次に、要素ごとの分析方法を紹介します。
1. ユーザー分析
ユーザー分析は、デザイン(設計)においての方針や優先順位の明示化をすることが目的です。
そのために、以下のフローでユーザーを分析していきます。
- 調査
- 調査結果の分析
- モデル化
1-1 調査
大きく分けて「定性調査」と「定量調査」の2種類の調査方法があります。
- 定性調査(行動や心理を把握する)
- グループインタビュー
- ワークショップ 等
- 定量調査(数値的に把握し仮説を裏付ける)
- アンケート
- ログ分析 等
1-2 調査結果の分析
次に調査で得られた結果を分析します。
定性調査はKJ法、定量調査は統計処理等の分析を行い、特徴や要素を抽出していきます。
1-3 モデル化
そして分析した結果を以下のような手法を用いてモデル化します。
- ペルソナ
- 具体的なユーザーを定義し振る舞いを明確化
- ワークモデル
- コンテクスチュアル・インクワイアリー
- ユーザーの環境を含めた調査、モデル化
- メンタルモデル
- ユーザーの心理状況の分析
モデル化することで、ユーザー調査の結果の論点がまとめられ、調査結果を直接参照せず、情報や競合する要素に優先順位をつけることができます。また、調査を行なった人以外のプロジェクトメンバーとユーザーについて共通の理解を得ることができます。
以上のようにユーザーを分析します。
設計時に必要なユーザー要素を集約すると以下3点になります。
- どんなユーザー状況がありうるか
- それぞれの状況におけるユーザーニーズ
- その優先順位
逆に、上記3点を網羅的にわかっているのであれば、調査・分析方法はどんなやり方でもよいといえます。
2. コンテンツ分析
さまざまな特性を持っている情報を活用するため、まず素材として情報を正しく理解します。
具体的には、
- サイト内で扱われるコンテンツの性質を正しく知る
- 情報を分解し、コンテンツ間の関係性や情報の持つグループを明らかにする
といったことを行います。
コンテンツのカテゴリー分け、コンテンツの変更や追加、コンテンツ間の関係性を検証し、現状の確認と将来的にどういう変更が起こり得るか把握が必要です。
特に、コンテンツ間の関係性は後のサイトストラクチャ設計やナビゲーション定義において重要となるため、可能な限り洗い出しておきます。
手法には「LATCH」や「KJ法」、「コンテンツモデリング」があります。
3. コンテキスト分析
コンテキスト分析では、設計・デザインを行うにあたっての制約、状況を明確にします。
コンテキストは、大きく2つに分けて考えます。
- プロジェクトの目的の明確化(ビジネス要件)
- 正しい現状の認識
プロジェクトの目的の明確化
一般に以下のようなポイントを明示することで、目標を明確化することができます。
- プロジェクトの定義
- このプロジェクトにて実現したいこと
- ビジネスゴール
- プロジェクトによってビジネス的に達成したこと
- ユーザーへ与えたい価値
- このプロジェクトでユーザーが得られる利益
正しい状況の理解
現在の得られる知見を最大限に活用します。
- サイト評価
- 現状のサイトの課題やあげられている効果を確認する
- 何が原因で課題となっているか、改善するには何が必要か定義する
- ベンチマーキング(競合分析)
- 評価ポイントを明確化した上で、競合他社の現状の課題または優れている点を比較する
手法には、「ヒューリスティック評価」や 「ユーザビリティテスト」、「ログ分析」があります。
これらの背景を整理することで、プロジェクトの目的や解決すべき課題が明示化されます。
後編へ続く
ユーザー、コンテンツ、コンテキストの整理が完了したら、いよいよ設計に入ります。後編では、その設計のプロセスをご紹介したいと思います。お楽しみに。